科学的に正しい勉強法【決定版】|論文でわかる、本当に効果があるテクニックだけを紹介

勉強・作業効率化

「最強の勉強法」を謳う記事はネット上に無数にありますが、そのほとんどは根拠となる研究が示されていないか、著者の個人的な体験だけで語られています。この記事では、教育心理学の分野で実際に発表された論文をもとに、効果が高いと確認されている勉強法だけを厳選して紹介します。あわせて、電気回路のテストで高専時代から毎回9割前後をキープしてきた筆者自身が、実際にどう使って、どう感じたかも合わせて書いていきます。

世の中の「勉強法」がなんとなく信用できない理由

多くの勉強法記事に共通しているのは、「なぜ効果があるのか」の説明が抜け落ちていることです。マーカーで線を引く、教科書を繰り返し読む、要点をきれいにノートにまとめる——これらは多くの学生が「勉強した実感」を得やすい方法ですが、実は記憶の定着という観点では効果が低いことが研究で示されています。

この分野で最も参照されている研究の一つが、Dunlosky et al. (2013) によるレビュー論文です。この論文では、学生が実際によく使う10種類の勉強法を集め、それぞれの効果を裏付ける研究の量と質から「高い効果」「中程度の効果」「低い効果」の3段階に格付けしました。この記事は、この格付けで「高い効果」とされた勉強法を中心に、電気回路のようなSTEM科目でも効果が確認されている研究とあわせて掘り下げていきます。

①想起練習(テスト効果)——読むより「思い出す」方が伸びる

Dunlosky et al. (2013) の格付けで、分散学習と並んで「高い効果」に分類されているのが想起練習(practice testing)です。読んで覚えるのではなく、何も見ずに自分の頭から思い出そうとする行為そのものが、記憶の定着を強くするという考え方です。

この効果を示した代表的な研究がRoediger & Karpicke (2006) です。この実験では、学生を「同じ文章を繰り返し読むグループ」と「読んだ後に思い出しテストを行うグループ」に分け、数日後に内容をどれだけ覚えているかを比較しました。結果、テストを行ったグループの方が明らかに高い成績を示しました。興味深いのは、実験直後の自己評価では「繰り返し読んだグループ」の方が「よく覚えている」と自信を持っていた点です。読み返す行為は理解した気になりやすい一方、実際の定着にはつながりにくいということです。

これは筆者自身の感覚とも一致します。ある単元を勉強するとき、1周目に思い出しテストをやってみると、正直ほとんど何も出てきません。しかし2周目以降になると、明らかに「あ、これ前も引っかかったところだ」という感覚とともに、確実に思い出せる範囲が広がっていくのが体感できます。最初にできないのは自分の理解が足りないからではなく、この勉強法がそもそもそういう性質のものだからです。認知心理学ではこうした「その場ではやりにくく感じるが、長期的な定着には効果的な負荷」を「望ましい困難(desirable difficulty)」と呼びます。1周目の手応えのなさに焦る必要はありません。

実践方法:白紙復元法 テキストや授業のノートを読んだあと、何も見ずに白紙に「覚えていることを全部書き出す」だけです。書き終えたら元の資料と照らし合わせて、抜けていた部分を確認します。ノートを取るときも、後で読み返してきれいに理解する用のノートではなく、この思い出しテストに使うための「問い」だけを書いておくノートを別に作っておくと、想起練習がやりやすくなります。たとえばテブナンの定理なら、ノートには「テブナンの定理の手順は?」とだけ書いておき、答えは書かない。後でそのノートを見て、白紙に手順を再現できるか試す、という使い方です。

②分散学習——同じ勉強時間でも「間隔」を空けるだけで定着率が変わる

Cepeda et al. (2006) は、100本近い先行研究をまとめたメタ分析で、同じ総学習時間でも、一気に詰め込む(集中学習)よりも、間隔を空けて複数回に分けて学習する(分散学習)方が、長期的な記憶の定着が優れていることを示しました。テスト前日に一夜漬けで詰め込んだ内容は、テストが終わった瞬間に急速に忘れていきますが、数日おきに繰り返し触れた内容は長く残ります。

やり方は単純で、一度勉強した内容を、1日後、3日後、1週間後、というように間隔を空けて何度も復習に戻ることです。ポイントは、この復習を「読み返す」のではなく、①で紹介した想起練習の形でやることです。想起練習と分散学習を組み合わせる「分散想起」が、単体のどちらよりも効果が高いことも、Dunlosky et al. (2013) のレビューの中で言及されています。

③インターリーブ学習——同じ単元を固めて解くより、混ぜて解いた方が身につく

3つ目は、STEM科目の演習にとりわけ関係が深いインターリーブ学習です。Rohrer & Taylor (2007) は、数学の問題演習において、同じ種類の問題を連続で解く「ブロック練習」と、異なる種類の問題をランダムに混ぜて解く「インターリーブ練習」を比較しました。結果、練習中の正答率はブロック練習の方が高く感じられるにもかかわらず、数週間後のテストではインターリーブ練習を行ったグループの方が明らかに高い成績を残しました。

これは、ブロック練習では「今解いている問題がどの解法を使うべきか」をあらかじめ知っている状態で解いているため、本当の意味での「どの解法を使うべきかを見極める力」が鍛えられていないことが原因だと考えられています。電気回路の演習で言えば、テブナンの定理の問題だけを20問連続で解くのではなく、テブナンの定理・キルヒホッフの法則・重ね合わせの理などを織り交ぜて解くことで、初めて「この問題はどの解法が適切か」を判断する力が身につきます。定期試験は問題ごとに解法が指定されていないので、この判断力こそが得点に直結します。

逆に、あまり効果が高くないとされる勉強法

Dunlosky et al. (2013) では、マーカーで重要箇所に線を引く(ハイライト)、教科書を繰り返し読む(再読)、自分の言葉で要約する(要約)といった、多くの学生が主力にしている勉強法が「低い効果」に分類されています。これらが完全に無意味というわけではありませんが、研究の裏付けが弱く、限られた勉強時間を使う優先順位としては低いというのが実情です。特にハイライトと再読は、「勉強した感覚」を強く感じやすい一方で、実際の記憶定着への寄与は小さいことが繰り返し確認されています。もしこれらを勉強法の中心に据えているなら、その時間の一部を想起練習に置き換えるだけで、体感できるレベルで結果が変わってくるはずです。

実践を続けるための道具

どれだけ効果が高い勉強法でも、続けられなければ意味がありません。ここでは、上で紹介した勉強法を実践しやすくするための道具を紹介します。

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ポモドーロタイマー 想起練習やインターリーブ学習は、ただ机に向かうだけの勉強よりも頭を使うぶん、集中力の管理が重要になります。ポモドーロテクニック自体は記憶の定着を直接高める研究に基づくものではなく、あくまで集中と休憩のリズムを作るための時間管理術ですが、上で紹介した勉強法を継続的に実践するための土台として活用しています。タイマーを選ぶときのポイントは、必ず「無音」で使えるものを選ぶことです。カチカチと音が鳴るタイプは、図書館やカフェなど周囲に人がいる環境では使いづらく、結局続かなくなってしまいます。実際に使っているのはこういう無音タイプのポモドーロタイマーです。

ノートは「見返す用」ではなく「思い出す用」に 先ほど紹介した通り、ノートは丁寧にまとめることよりも、想起練習に使える形で作ることを優先しています。答えを書かず、問いだけを残しておくノートの作り方は、特別な道具がなくても今日から始められます。もう一点、個人的にはノートのサイズはA4がおすすめです。B5だと、白紙復元法で「覚えていることを全部書き出す」ときにスペースが足りなくなりがちで、書きたい内容を途中で圧縮してしまうことがあります。A4サイズなら余白に余裕があるので、思い出した内容を図やメモも含めて遠慮なく書き出せます。普段使っているのはこういうA4ノートです。

筆記用具は「書き心地がいい」もので揃える これは記憶に関する研究に基づくアドバイスというよりは、純粋に継続のための工夫です。書き心地の良いシャーペンを使うと、単純に勉強すること自体が少し気持ちよく感じられます。この「気持ちよさ」がモチベーションの土台になるという実感があります。どの製品が合うかは正直かなり好みが分かれるので、色々試して自分にしっくりくる一本を見つけるのがおすすめです。参考までに、普段使っているのはこういうシャーペンです。

よくある質問

Q. 一夜漬けは本当に意味がないのですか? A. 完全に無意味というわけではなく、翌日のテストだけを乗り切るなら短期的には機能します。ただし、Cepeda et al. (2006) が示す通り、そこで詰め込んだ記憶は非常に速く失われるため、その科目の内容を後の科目や実務で再び使う可能性があるなら、分散学習に切り替えた方が長期的には効率的です。

Q. 想起練習は何も見ずに思い出せないと意味がないのですか? A. 思い出せなかった場合も、その後にすぐ答え合わせをすれば効果があることが研究で示されています。大事なのは「思い出そうとする」という行為そのものであり、完璧に正解することではありません。むしろ1周目に思い出せない経験こそが、この勉強法が機能している証拠です。

Q. 想起練習・分散学習・インターリーブ学習は同時に組み合わせてもいいのですか? A. むしろ組み合わせることが推奨されています。分散した間隔で復習するたびに想起練習を行い、その際に複数の単元を混ぜて出題する、というのが理論上もっとも効果が高い形です。この記事で紹介した3つは、別々の勉強法というより、同じ勉強習慣の中で同時に実践できるものだと捉えてください。

まとめ

「最強の勉強法」と呼ばれるものの中には、なんとなく良さそうというだけで根拠が乏しいものも少なくありません。この記事で紹介した想起練習・分散学習・インターリーブ学習の3つは、いずれも複数の研究によって効果が確認されている数少ない勉強法です。共通しているのは、どれも「その場では大変で手応えを感じにくい」という点です。しかし、その負荷こそが長期的な定着につながる望ましい困難であることを覚えておくと、1周目でできなくても焦らずに続けられるはずです。

参考文献

  • Dunlosky, J., Rawson, K. A., Marsh, E. J., Nathan, M. J., & Willingham, D. T. (2013). Improving Students’ Learning With Effective Learning Techniques: Promising Directions From Cognitive and Educational Psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58.
  • Roediger, H. L., & Karpicke, J. D. (2006). Test-Enhanced Learning: Taking Memory Tests Improves Long-Term Retention. Psychological Science, 17(3), 249-255.
  • Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T., & Rohrer, D. (2006). Distributed Practice in Verbal Recall Tasks: A Review and Quantitative Synthesis. Psychological Bulletin, 132(3), 354-380.
  • Rohrer, D., & Taylor, K. (2007). The shuffling of mathematics problems improves learning. Instructional Science, 35(6), 481-498.

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